2月3日
狩場で
ドワーフの子供を拾った。
傍らには親であろう爺が死んでいた。どうやら熊に襲われたらしい。
ひ弱な種族のくせにオークの領域にまで踏み込んでくるからこうなるのだ。
子供は連れて帰ってくる。
太らせてから喰おう。
2月20日
狩に連れて行ってみた。ちっとも戦力にならん。
脆弱な
ドワーフの、しかも子供に期待するほうが間違いだった。
弱いだけならまだしも、好奇心で危険に突っ込んでいくのは勘弁してくれ。
ものめずらしげに呪術を見ていた
太らせるためにメシは たらふく喰わせる。
3月7日
以前の狩り以来、奴を連れ歩くのをやめている。
それが悔しいらしく、家事の合間に戦斧の練習をしている。
下手くそだ。われらオークの足元にも及ばんな。
まあ、心意気は認めてやろう。
4月11日
亀の歩みのような狩りの進歩に業を煮やし、初歩の呪術を教えてみた。
驚いたことに、
ドワーフのくせに素質が有るようだ。
ソ
ウルクライをしながらはしゃいでいた。
喜ぶのは良いのだが、料理の腕前もなんとかしてくれ。
5月1日
ドワーフの習性である『死体漁り』を戒めた。
仮にも崇高な精神を持つオーク、その村に住むものがやるべき所業ではない。
だいぶとしょげていた。きつく言い過ぎたかもしれない。
5月2日
全身草の汁にかぶれて寝込んでいる。
『なぜアタシは緑色じゃないぽ・・・。みんなと一緒がいいぽ・・・。』
泣きじゃくりながらの訴えに、どう答えれば良いのか。
小さな手を握り締めながら途方にくれる。
5月20日
カカイ様の御力で、オークに生まれ変わらせる試練を受けられることになった。
ありがたい。本当に感謝いたします。
夕飯を食べながら、『絶対オークになって、シャーマンを目指すぽ!』と はしゃいでいた。
まだ試験の内容は伝えられていないが、何があっても良いように、若い頃に使っていた装備を譲ることにする。
あの小さな身体に合わせるので だいぶ縮めなきゃいかんな。
5月30日
試験の通達があった。
内容は・・・『
ドワーフの首を持ってくること』
泣き出しそうな笑顔にかける言葉などない・・・。
われらはカカイ様の御厚情を悟った。
6月1日
試験の旅立ちの日。
抜けるような青空の下、二人連れ立って
ゲートキーパーに向かう。
もう帰ってこないだろう。本来居るべき場所に帰るだけなのだ。
お古の装備に身を包んだ小さな・・・小さな家族よ。
オークの証、勇猛のネックレスをその首へ。
ゲートの光に包まれながら、別れの言葉を交わす。
『でじゃかるパアグリオ!でじゃかるオロカ!でじゃかる・・・お父さん・・・。』
デジャカル・・・娘よ・・・。